こんにちは。
保育園の経営・人事を10年経験し、現在は保育園のコンサルタント、転職エージェントなどで生計を立てているMayosayoでございます。
今回は、私の経験からすると、保育園を開業する上で重要な点で1・2位を争う「物件」についてお話します。
保育園って、安全性を鬼のように重視します。「良い物件あるんだけど?」くらいの感覚ですと、おそらくその物件は「1秒で開業不可」と分かる程度の物件です。
私のコンサルティング業務の中にも、しっかりと「物件の適正評価」を入れてます。
簡単に見つかった物件で開業できるほど、保育業界は甘くありませんので、しっかり勉強してください。
保育園の物件適正で重要な3点
保育園は、とにかく安心・安全でなければいけません。
開業したいとやる気に満ち溢れている方は、たくさんの物件を提案してこられます。
しかし、残念ながらそのほとんどの物件が保育園を作ることが出来ない物件です。
今回の説明でわかりますが、「2箇所2方向の避難経路」と「保育園は何階に作れるか?」そして「築年数」を押さえておきましょう。
先に勉強しておかないと、開業できる訳ない物件でシミュレーションしたりして、とんでもなく無駄な時間を費やすことになります。
保育園の物件の最低基準「2箇所2方向の避難経路」
2箇所2方向避難です。最優先…というか絶対条件です。
絶対条件なので、もう「そこをなんとか…」という訳には参りません。
“2箇所2方向避難”というのは、避難口が2箇所あって、2方向に避難できるということです。
「はいはい、2箇所避難口があれば良いんでしょ」と思ってるくらいではダメです。2方向でなければならない訳です。
また、エレベーターは地震などで止まるので、避難経路に含みません。
ちょっと画像で説明します。
保育園の2箇所2方向避難が認められる経路
このように、画像で上と下に避難できるとか、下と左に避難できるとか、こういうことを2箇所2方向避難と言います。
2箇所かつ2方向なんです。
もう少し説明します。
保育園の2箇所2方向避難が認められない経路
この左の例、2箇所1方向ですね。この物件はダメです。(大きい物件で10m離れてるならOKの場合アリ)
特に画像の右の例ですが、こういう物件が結構多いです。ビルもしくはテナント(保育園)を出た瞬間は2方向でも、結局同じ道路に出てくる場合、これは1方向と見なされます。
地震があった時に、保育園さえ出られれば安全という訳ではありませんよね。ちゃんとビルの外の道路まで出れなければ意味がありません。
このNG例のように1方向にしか出られない場合、その1方向が崩壊していた場合、閉じ込められてしまう可能性があります。
しかも、避難するのは乳幼児ですから、とにかく安全に避難できなければいけません。
2箇所2方向避難の考え方
2箇所2方向避難については、”保育園から出るまで”ではなく、”その建物から出るところまで”2箇所2方向避難でなければならないと考えてください。
そして、子ども主体で考えるということです。
我々は大人なので、大人なら避難できると考えてしまいますが、赤ちゃんや1〜2歳の段差の上り下りすらままならない子どもを抱えて避難するのです。
避難はしごとか、手すりがスッカスカの階段がダメなことも分かりますよね。そんなのだと、逆に避難中の方が危険ですよね。
保育園を開業できる「階数」について
1階〜3階までしか”保育”はできないと考えておいてください。
法律的に4階以上も不可能ではないのですが、4階以上の保育園を認める自治体はまずありません。
地下もダメです。
(ただ、これ、保育園というか”保育する部屋”の話です。後述)
理由としては、結局は避難のしやすさです。地下や4階以上の場合、避難できなかったり、避難が遅れてしまう可能性が高まりますからね。
また、2階や3階に保育園を作る場合、先ほどの2箇所2方向避難がかなり大きな壁になります。
保育園&建物が2箇所2方向でなければなりませんし、エレベーターもアウトですので、2箇所2方向に階段がある物件でなければいけないんですよね。
改装でどうにかなる場合は良いですが、小さいビルの2階以上はかなり難しいでしょう。
保育園自体は地下1階〜4階などでも開業できる
1〜3階でしか保育はできませんが、地下や4階を使うのはOKです。
どういうことか、画像をご覧ください。
このように、保育は1〜3階でしかできなくても、地下1階を倉庫にして、4階をスタッフルームにする分には問題ありません。
子どもは1〜3階にしかいませんので、子どもたちは安全ですからね。
1〜3階じゃないと無理だと思っていると、良い物件があっても小さい保育園しか作れないかも知れません。でも、こういうことを知っておけば、1〜3階をフルに保育室として使えて規模を大きくすることが出来ますし、地下や4階以上も有効活用出来ますよ。
ビルの一棟貸しなんかも多いですので、ぜひぜひ知っておいて欲しい知識です。
保育園をテナントで開業する場合の「築年数」
最後に、築年数についてです。
1981年以降のビルは新しく制定された耐震基準を満たしている「新耐震」の建物ですが、それ以前に作られた建物は「旧耐震」です。
借りようとする物件が「旧耐震」だと、認可系の保育園は開業できません。
開業の条件に「耐震基準を満たしていること」が入っています。
よって、1981年以降の建物で絞り込みのが一番簡単ですが、そうそう良い物件には巡り合えません。
しかし、諦めるのはまだ早いです。
1981年の建物でも耐震工事を行い「新耐震」に対応している場合も多いので、古い物件でも新耐震を満たしているか確認してもらいましょう。
おわり
2箇所2方向の避難経路についてと、保育できる階数、築年数についてお話しました。
それでは今回のまとめです。
- 2箇所2方向は、2箇所かつ2方向へ避難できなければならない
- 保育園だけでなくビルからも2箇所2方向へ避難できなければならない
- 1〜3階しか保育できない
- 地下や4階は保育以外には利用できる
- 「新耐震」になっていなければならない
今回の情報は保育園を開業するに当たって、絶対に必要な知識です。
あまり難しい内容ではないので、開業を検討している方はしっかりと覚えておきましょう。
それでは、保育園が開業できることを祈っております。