保育業界に参入が決定しても、喜んでる暇はありません。
次は急いで保護者や職員、園児のための書類を用意しなければなりません。
ここでは、保育園の経営・人事を10年経験後、保育園のコンサルを行なっている私が、保護者向けの書類の整備についてお話しします。
初めて保育業界に開業した場合、”運営しながらノウハウを蓄積しよう”と思うでしょう。
しかし、そう思っているのは経営側だけで、他は全員”すでに完全な状態で開業している”と思っているんです。
保育園の開業後に必要な保護者向けの書類
認可保育所や小規模保育園のような認可系保育園の場合は、区が用意している”入園のしおり”的なものがあります。(名称は区によって違います。)
しかし、この”入園のしおり”ですが、認可保育園の入園申し込みの方法や保育料について、また公立保育園の利用方法についてはしっかり書いてありますが、私立の保育園の説明はそんなに書いてありません。
よって、「入園のしおりがあるから保護者への説明は済んでるんだろうな」と思ってたら大間違いなんです。
また、認証保育所を始めとする認可外保育所に至っては、全て自分で用意する書類で説明できなければなりません。
保育園に必要な保護者向けの書類の一覧
それでは、最低限必要な保護者向けの書類の一覧とその内容をご説明します。
- 重要事項説明書(入園のしおり)
- 保育所規則(園規則)
- 利用契約書
- 園だより
- 給食献立表(給食だより)
- 連絡帳
保護者向けの書類だけで、最低でもこれだけは必要になります。
私は一人で全ての書類をゼロから作成できますが、初めての開業となると訳がわからないと思います。
それぞれご説明します。
重要事項説明書(入園のしおり)
重要事項説明書は、その名の通り重要事項を説明する書類ですが、言い方が堅いので”入園のしおり”などと名前を付けています。
認可系保育園の場合でも、区のものとは別に自分の保育園用のものを準備しなければなりません。
保育スタッフの数や保育理念、施設の規模や避難経路などの施設概要や、夕食の予約は何時までとかこの服装は禁止だとか、苦情窓口の案内、保育料の設定(認可系の場合は延長料金)および支払方法や期限、年間行事予定など…
ほとんど全てのことをこの重要事項説明書で説明するのがオススメです。
様式は自由なので、この重要事項説明書と次に説明する保育所規則で分けて説明する保育園もあります。
ただ、私は2種類の書類をそれぞれ保護者に熟読させるのは難しいと考えてますので、重要事項説明書にて全て説明するのが良いと思います。
この書類の完成度が高ければクレームの数を大幅に減らすことができます。
保育所規則(園規則)
ちなみに、正式には保育園は保育所と言います。
しかし、通称は保育園なので、”所”だの”園”だの入り混じります。あまり気にしなくて良いですが、私はオフィシャルは書類は”所”で統一しています。
この保育所規則(園規則)は、重要事項説明書で説明する内容と似ていて、同じようなことを書きつつ、少しお堅い書き方をするのが一般的です。
ただ、重要事項説明書で全てを説明していれば良いので、重要事項説明書を完璧にして、園規則の方には「重要事項説明書に記載の通り」とか「重要事項説明書に定める」と書いて簡単に終わらせるのをオススメします。
利用契約書
認可系の場合は延長保育料を保育園で徴収し、基本の保育料は区が徴収します。
認可外の場合は、保育料も延長料も保育園で徴収します。
その保育サービスの利用契約書です。
利用時間と料金とサービスを明記する普通の契約書ですので、これは特に難しい書類ではありませんね。
園だより
園だよりは、毎月発行する保育園からのお知らせです。
「○○保育園通信」とか「○○保育園新聞」などと名前を変えてもOKです。
時候の挨拶や今月の行事のおしらせ、季節ごとでの注意喚起などをしていきます。
「季節の変わり目は体調管理にご注意を〜」とか、「トイレトレーニングはじめました」とか「水筒をご準備ください」とかですね。
重要事項説明書は基本的に変更しませんので、細かなお知らせはこの園だよりで周知します。
また、重要事項説明書にすでに書いていることのリマインドにも、この園だよりを使いましょう。
給食献立表(給食だより)
調理員用のメニュー表とは別に、毎月保護者に毎日の給食の内容をお知らせするものです。
この献立表を見て晩御飯を考える保護者がほとんどですから、必須ですね。
これは、メニューの一覧を載せるだけですので、簡単です。
経験のある栄養士さんを採用すれば、簡単に作ってくれます。
連絡帳
日々の健康記録を保護者に報告するための書類です。
体温や食べた食事の量などを記載します。
保育園の家庭の連携は重要な保育園の仕事の一つですので、子供の様子を伝え間合います。
大抵、「今日は○○遊びをして、みんなと楽しく遊んでました」風な、日記のようなコメントを書いて渡します。
3歳以上は日記のようなコメントを書かなくなることが多いです。
日記コメントのせいで保育士にとっては負担の大きい書類ですが、園だよりと並んでリマインドにも使える便利な書類です。
保育園開業後の保護者からのクレームは”説明不足”がほとんど
モンスターペアレンツが多いとかよく言われますが、私からするとモンスター保育士の方が多い印象です。
ちゃんと説明できていれば、クレームはそんなに発生しません。
怪我や保育士の失言・ミスに対するクレームは別で発生しますが、これを完全に無くすのは難しいです。日々努力しましょう。
で、クレームが発生する流れというと…
- 説明を受けてないのに急に保育園から何かを言われる。(「例えば明日から○○持ってきて」とか)
- 「いきなり言われても困るわ!」とイラっとする。
- 帰って重要事項説明書や園だより、連絡帳を確認する。
- 周知されてなければクレームになる。*しっかり周知してあれば自己責任だと我慢する。
感情的にその場で怒る保護者もいますが、怒られても「何度もお知らせしてるんですけど…」と返せるのが大事です。
説明してリマインドして、最後に口頭でも伝えたのに、それでもキレる保護者は少ないです。
保育園のモンスターペアレンツ対策
これは私の経験則ですが、モンスターペアレンツは2種類に分かれます。
それは、”先天的モンスター”と”後天的モンスター”です。
先天的モンスターには、万全の体制で立ち向かう必要があります。
後天的モンスターは、モンスター化させない予防が大切になります。
先天的モンスターペアレンツの対応
先天的モンスターは、元々の性格がモンスターペアレンツで、クレーマーの人です。
何かにつけてクレームをつけてきます。
あくまで、”何かにつけて”クレームを言う訳ですから、その何かが無い…つまり、こちら側が完璧に対応していればクレームを言う余地はありません。
しかし、保育園を経営していて、経営陣だけでなく現場のスタッフが全くミスをしないということはありえません。
先天的モンスターペアレンツは、私としては”構ってちゃんの強化版”だと思っていますので、大変だとは思いますがひたすら対応をするしかないと思います。
また、対応をすると言うのも、親友や家族のようにメチャメチャ親身にはならず、ある程度の距離を保っての対応が良いでしょう。
強化版の”構ってちゃん”ですから、あまり距離を近づけすぎると依存されてしまう恐れがあるからです。
後天的モンスターペアレンツの対応
後天的モンスターペアレンツとは、我々運営側や現場のスタッフの対応が悪かったりミスがあった時、そして更にその後のケアにも失敗した時にモンスターペアレンツ化してしまう人です。
つまり、完全にこちら側が原因でモンスター化してしまう人です。
こちらも先天的モンスターと同様、こちらの対応が完璧であれば良いんですが、後天的モンスターの場合はそれよりもミスなどの後のケアが肝心です。
ミスをしてもその後のケアがしっかり出来ていれば、モンスター化せずに済みます。
先天的・後天的モンスター両方に共通する対応
一番大事なのは、保護者向けの書類をしっかりと整備し、情報をしっかりと周知すること。
次に大事なのは、トラブルがあった時は”言った言わない論争”を避けること。
保護者の意見やクレームはしっかりと記録し、こちらは”言った言わない論争”には参加せず、記録に基づいて対応しましょう。
また、考え方として大事なのは、モンスターペアレンツに勝つことではなく、健全な施設運営をすることです。
モンスターペアレンツを倒すことを念頭におくと、そのトラブルでは勝てたとしても、また再発してしまいます。
再発する理由は、その保護者と敵対してしまうからです。
敵対すると、現場のスタッフもその保護者と関わりたくなくなりますので、結局、周知やリマインドでミスがでます。
ミスを繰り返すと、もう保育園は勝つことは出来ません。
おわり
保育園の開業が決まっても、全く落ち着いていられません。
開業決定から、開業までの短い期間で、保護者用・子供用・保育士用の書類を完璧に準備しなければなりません。
初めての開業だからと言って、保育を良い加減にする訳にもいきません。
保護者は、保育園は当然に完璧な状態で開業していると思っています。
保育士も、オープニングスタッフとして、希望を胸に新天地やってきます。
初めて保育業界に開業した場合、”運営しながらノウハウを蓄積しよう”と思うでしょうが、そう思っているのは経営側だけで、他は全員”すでに完全な状態になっている”と思っているんです。
保育園を準備不足で開業すると、本当にカオス状態になりますので、準備はしっかり整えましょう。