【経営コンサル】保育士の離職防止の基礎|使える内部書類をしっかり作成しよう

【経営コンサル】保育士の離職防止の基礎|使える内部書類をしっかり作成しよう

保育士不足が深刻なのは保育業界に参入していなくてもご存知だと思います。

しかし、新しい保育園はドンドン増えています。

また、福祉事業を経験ない人が普通に職場環境を作ると、普通にブラック保育園に仕上げてしまいます。

現にブラック保育園も沢山ある訳ですが、ブラック保育園は保護者からの信用もなく、保育士不足に悩み続け、保育の質も最悪になります。

そんな親にも社員にも子どもにも最悪な保育園は作らず、ぜひとも良い保育園を作ってくださいね。

今回は、保育園の経営・人事を10年経験し、現在は保育園コンサルタントと保育士転職エージェントとして働く私が、保育園の全てを支える保育士の確保と離職防止のための環境づくりについてお話します。

保育園の経営における保育士の重要性

保育園は保育士を使って運営する施設ですから、保育士が重要なのは分かっていると思います。

ご存知の通り、保育士は”代わりはいくらでもいる”という時代は終わっています。

保育園を経営する上で、保育の質を上げつつ、様々な危機管理…というか危機回避に努めなけれななりません。

保育士の離職率が高いと、保育の質は一向に上がりませんし、求人に延々お金と時間を使わなければなりません。

何より、いつまでも優秀な人材が育ちませんので、事業拡大もできません

しっかりと確保し、離職させないことが重要です。

保育士の確保

保育士の確保ですが、当然、求人広告を出したり転職エージェントを使って集めます。

しかし、都市部ですと保育士不足は深刻で、地域とタイミングによっては求人倍率が10倍を超えることもあります。

普通に求人を出しても全然集まりません。

オープニングスタッフですと少しは人気がありますので、開業までは良いかも知れません。

ただ、オープニングスタッフでも開業後に年度途中で退職してしまったら、途端に確保が難しくなります。

そんなすぐに辞めないだろうと思うかも知れませんが、まともな職場環境を用意できていなければ年度途中でもガンガン辞めていきます。

具体的な保育士の確保については別記事で確認してください。

保育士の定着に最も重要なのは園長のマネジメント能力

園長は保育士にとって最後の要です。

園長が救ってくれるのか、見放されるのか、優秀なのか、無能なのか、これで保育士の定着率は決まります。

園長には、十分な保育経験だけでなく、マネジメント経験も必要です。

トラブル時には最も頑張らなければならないのが園長ですし、その園長が優秀でなければ、経営側がドンドン前に出て園長をサポートしてください。

そして、日頃から園長をサポートするために、園長の判断量を下げるためにも、しっかりとした書類の整備が必要です。

しっかりとした書類を整備することで、園長だけでなく保育士の負担も軽減することができます。

保育士の離職防止のための書類(規則)の必要性

法律で日本人の統率が取れているように、保育士の統率を取るために規則を作りましょう。

その規則を書類にまとめて周知します。そして、その規則を元に園運営を行いましょう。

規則があると嫌な気分になると思うかもしれませんが、必要な規則が必要な量あるのは当然ですし、少しの不満が残っても保育士は納得できます。

自分の理想と少し違っていても、”納得できる”というのは長く働く上でかなり重要なのです。

保育園に整備する保育士向け書類の一覧

それでは具体的にどのような書類を整備するべきかをお話しします。

  • 就業規則・賃金規定
  • 職員服務規程
  • 雇用契約書・労働条件通知書
  • 面接用雇用条件説明シート・面接管理シート
  • 採用通知・入社までの説明書
  • 職員指導用書類

もう少しあってもいいですが、規則が多すぎるとうんざりしてしまいますし、現場の管理職が覚えられなかったりするので、一旦これくらいで運用しましょう。

それぞれ見ていきます。

就業規則・賃金規定(給与規定)

これは普通に作るでしょうから、あまり説明はしません。

10人以上の人を雇用する場合、労働基準監督署に提出する必要がありますので、作らないなんてことはできません。

基本的には社労士さんに作ってもらうべきなんですが、何もなく社労士に任せると、テンプレのようなものしかできません

よって、次に説明する服務規程を先に作っておき、その服務規程に則した形で社労士さんに就業規則&賃金規定を作ってもらうのが良いでしょう。

職員服務規程

普通は就業規則内に決めておくんですが、労基署に提出する就業規則を毎回変更するのは大変です。

そこで、別途服務規程を定めるのが良いです。

細かいところまで定めてしまうことで、統率の取れた組織づくりができます。

あまり規則を作りすぎるとお堅いつまらない会社と思うかも知れませんが、”自由な会社=良い加減”と思う人の方が多いです。

そして、経営者がその都度判断して規則が決まったり変わったりするのは、ブラックの典型です。

社員の心構え、保育士の仕事内容、有給休暇の申請の期限とか、遅刻や早退・欠勤時の対応、SNSの制限、ハラスメント対策についてなど、細かいところまで決めるのがオススメ。

雇用契約書・労働条件通知書

雇用契約書と労働条件通知書は、書類としての意味合いに大きな差はありません。

雇用契約書の場合、本人の署名捺印は必須ですが、労働条件通知書は会社印だけでもOKです。

とりあえずは、入社時は雇用契約書、その後の給与や待遇の変更は労働条件通知書という具合で良いでしょう。

この雇用契約書と労働条件通知書ですが、求人票や就業規則等と違っていたりすると、職員に不安を与えますし、産育休や退職などの大きな出来事の際にトラブルになります。

面接用雇用条件説明シート・面接管理シート

名前はどうでも良いですが、この面接管理シートの作成目的は2点です。

1つめは、単に面接の内容を記録するためです。”言った言わない論争”を避けるためですね。

面接は、人手不足の保育園と、とりあえず内定が欲しい保育士の間では、都合のいいことばかり言い合うことがあります。そして採用後にどうなるかというと、それぞれが都合のいいことしか覚えていません。記録の大事さが分かりますね。

2つめは、面接官が変わったり、採用条件を忘れたりしても、面接の質を担保するためです。

面接の経験がない職員に任せることもあるかも知れませんし、新しく変更した採用条件を忘れたりすることはありえます。よって、誰がいつやってもちゃんとした面接ができるようにするために、この書類が必要です。

また、この書類を作ることで、面接をより良いものにしようと思うはずですので、辞退率を下げるのにも役立ちます。

採用通知・入社までの説明書

テキトーな採用通知を送って終わりだと、「この会社大丈夫か?」と思われるのは当然で、保育士が読む読まないは別として、しっかりとした入社までのロードマップを示してあげるのは重要です。

複数の内定を取っている保育士であれば、その採用通知等のクオリティの差で、別の園に決める可能性はかなりあるワケです。

内定連絡して雇用契約書を取り交わしたら、あとは放置という保育園も多いので、内定後もケアすることで辞退率を下げることができます。

職員育成マニュアル等

理想は試用期間中の1~3ヶ月の間、しっかりと研修をするのが一番ですが、かなり大きな会社に育ってからでないと不可能でしょう。

よって、OJT研修と称していきなり現場にぶち込む以外に方法はありません

OJT研修とは、On the Job Trainingの略で、トレーナーと共に実務をしながら知識やスキルを学ぶ研修方法です。

OJT研修は、業務内容によっては、または優秀なトレーナーがいれば有効な研修ですが、保育園に優秀なトレーナーがいるということはあまりありません。

経験のある保育士がトレーナーとしての経験まであるとは限りませし、優れた保育士がトレーナーとして優れているとも限りません。

というより、おそらく保育士の多くは、しっかりとした研修を受けずに育っていて、研修の仕方が分からないと思います。

こういう保育士にいきなりOJTを任せても、イマイチなOJT研修となってしまい、新人のモチベーションを下げ、研修を任された方も重荷ですらなく、新人と先輩を一気に失うという”やらない方がマシだった”状態になることもあります。

よって、マニュアル等の書類をしっかり整備して、OJT研修の内容をしっかり確立し、記録してOJT研修の質も上げ続ける必要があります。

おわり:面倒でも書類整備しよう

経営者や園長が優秀であれば、とりあえず何とかなってしまいます。

しかし、何とかなっている状態というのは長続きしません。

そして、気がつくとブラック保育園が出来上がっています。

向上するより、維持する方が難しい。

変わるより、変わらない方が難しい。

変わらざるを得ない時期まで粘ってしまうと、袋小路になっている場合が多いです。

もし、書類を整備していないようなら、社労士やコンサルに依頼して、さっさと整備してしまいましょう。

もちろん、整備できたら、PDCAを回していきましょう。

それでは、保育士の定着ができる組織づくりができることを祈っております。

保育園の開業・経営・人事にお悩みなら

私は、保育園の経営・人事を10年勤め、現在は保育園コンサルタントとして活動しております。 保育園の開業・経営・人事の経験および実績が複数あります。 保育園のことで、お悩みの方は、コンサルティングサービスを是非ご一考ください。

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