待機児童や保育士不足の問題がニュースで定期的に取り上げられていますね。
”日本死ね事件”の頃と比べると少し落ち着いた感がありますが、まだまだ大きな社会問題のひとつです。
待機児童がたくさんいるということは、需要がたくさんあると言うことです。
「需要あるから儲かるんだろうな」と思うでしょう。
何を以って儲かるという基準にするかは人それぞれですが、もちろん儲かります。
今回は、保育園の経営・人事を10年担当し、現在保育園コンサルとして活動している私が、「保育園を開業したらどれくらい儲かるのか?」「その儲けは割に合ってるのか?」「ウハウハでアーリーリタイアできるのか?」というところをお話します。
保育園を開業したら儲かるのか?
まず、保育園というのは、原則として「認可保育所」のことを指します。
認可保育所というのは、0歳〜就学前の子どもが60名〜数百名いる保育園で、保育園と言われたら真っ先に思い浮かぶ形態の保育園です。
園庭があって遊具があって〜と、施設の見た目は幼稚園と似てますかね。未だに保育園と幼稚園の区別がついていない男性は多いですよね。
あれ、イライラします笑
*ちなみに保育園ではなく保育所が正式です。
*幼稚園は学校、保育園は福祉施設というイメージでいてください。
*通称、小規模保育園と言われているものは、小規模保育事業が正式名称です。
さて、「儲かるのか?」という話ですが、保育園の形態・規模によります。例として、都内の認可保育園と小規模事業についてお話しします。
ここからの内容は、前半はあまり楽しくないですが、後半は楽しいと思いますので、最後まで読んでくださいね。
認可保育所を開業した場合の儲け・報酬
例えば、60名程度の認可保育所の場合、最高の経営状態であれば、ざっくり年間売上1億円(補助金ですが)、経常利益1000万円というところです。
とりあえず、800万円の黒字と考えておきましょうか。ここから、税金と返済を引いた分が残りになります。
今は、認可保育所の開業にかかる資金は、自治体によっては、ほとんどが補助金で戻ってきますので、開業に1億円かかったとしても、実質2000〜3000万円で開業できるという感じです。
保育園運営の仕事を全くしないのなら、自分への報酬は年100〜200万円になるかと思います。(最高の状態に持っていければ、200万上乗せです。)
お店を出して人に任せて年100〜200万もらえると言うのは、個人的には儲かってると言って良いと思いますが、これを儲かると思うか、儲からないと思うかは人それぞれでしょう。
でも、「あんまり儲からないな」と思う人が多いのではないでしょうか。
やはり、自分も保育園の園長なり保育士なり事務員なり調理員になって、人件費を浮かせて、その浮かせた人件費分も貰わないと儲かるとは言えませんね。
もちろん園長が一番人件費が高いので、自分が園長になるのが一番です。そうすれば、年600〜700万もらえるでしょう。
返済や物件の家賃、保育士の給料設定によって、全然変わってくるのは言うまでもありません。
小規模保育園を開業した場合の儲け・報酬
小規模保育園(正式には小規模保育事業)を開業した場合です。
認可保育所と紛らわしいので、保育園という名称を使うべきではないのですが、ここでは小規模保育園と言っておきます。
小規模保育園とは、0〜2歳までを預かり、定員は6名〜19名内で設定する保育園です。
0〜2歳は補助金が高いので、少し割が良いです。
- 6名の定員設定なら、売上1500万、黒字150万。
- 15名の定員設定なら、売上3500万、黒字350万。
ただ、この黒字分から、返済と税金が引かれることはお忘れなく…。
小規模ですので当然、売上は低いです。
こちらは尚更、自分か配偶者さんをスタッフにして、人件費を浮かせる必要が高まりますね。
あんまり儲からないから、超有名企業は参入してない訳ですね。
保育園を開業して儲かるまでには注意が必要
さて、「あんまり儲からないな〜」と思ったところに、更に追い打ちです。
認可保育所の場合は、0歳〜就学前まで預かります。しかし、待機児童のほとんどは0〜1歳です。
2〜3歳も小規模保育園から転園してきたりしますが、開業直後は4歳と5歳の園児は入ってきません。
定員60名でも、園児数30人とかそれ以下からスタートすることになる場合があります。
その子たちが進級して、やっと満員になるという流れです。
よって、開業後2年くらいは、赤字になる場合もあります。
小規模保育園の場合は、0〜2歳までしか預からないので、開業して直ぐ満員になる可能性はあります。
保育園を開業して儲ける方法
保育業界は福祉の仕事ですので、法人や代表者の信用性や法人の安定性を重視します。
自治体も税金を払う訳ですので、変な法人を認可すると、区民から苦情の嵐です。
よって、とにかく認可系の保育園は参入障壁が高いです。
しかし、良い物件・良いコンサルやFC(フランチャイズ)・情熱を持って挑めば、参入することは可能です。
ただ、参入できても、上記程度の売上ですよね…。
良い加減「メリットないの?」と思ってきたところでしょう。
認可系保育園を開業するメリット
保育園を開業するメリットですが、一般のビジネスでは考えられない壮絶なメリットがあります。
あまり儲からない代わりに、この壮絶なメリットがある訳です。
認可保育所や小規模保育事業で開業できた場合のメリットは以下の通りです。
- 自治体が園児を振り分けてくれるので集客の必要がない。
- 認可されている事業なので社会的信用が高い。(銀行の評価とか)
- 園児は卒園まで通ってくれるのが一般的。
- 待機児童問題のお陰で、各種補助金が上がっている。
- 待機児童が解消されても認可されているので自治体に守られる可能性が高い。
認可保育所や小規模保育事業に参入できれば、こんな凄まじいメリットがあるんです。
まず、集客をしなくていいなんて、奇跡のようなメリットです。
そして、補助金も上がってるものがありますので、何もしなくても売上が上がったりします。
もう、何もしなくても10年は安泰と言えます。
何もしなくて10年安泰なビジネスなんてありませんよね。
メリットを最大限に活かして儲ける
保育業界は参入障壁は高いですが、一度参入できれば保育事業者としての実績ができますので、2店舗目、3店舗目と事業の拡大が容易になります。
先ほどの認可保育所の儲けの例ですと、100万〜400万円が自分が働かなくても貰えるができる額でした。
これではアーリーリタイアするには全然足りませんが、もし認可保育所を5店舗作れたらどうでしょうか?
自分が働かなくても、500万〜2000万円貰えます。(自分が働けばその人件費が浮いて更にプラスです)
しかも、集客やお客が居なくなる心配なしです。
将来、保育園ではないサービスが台頭するかも知れませんが、現状を見るとまだまだ心配ありません。
事業を拡大してくると、マネジメントに労力かお金をかけないとなりませんが、それくらいは良いでしょう。
認可系の参入障壁が高すぎて自分には超えられない場合は、1店舗目だけ認可外で挑戦するのもアリ
結論:保育園を開業できれば、最終的には儲かる
と言うわけで、1店舗だけでみると生活はできますが、儲かるとは言えません。
しかし、複数店舗展開することで、自分や自分の家族を養うくらいの収入が得られます。
参入障壁は高いですが、挑戦してみる価値はあると思いますよ。
ただ、少し肝に命じて置いて欲しいことがあるので、小話を一つ。
保育園を開業して成功したけど、破滅した人のお話
認可系の保育園を複数舗経営している方がいたのですが、保育園で儲けて調子に乗ってしまって、倒産してしまいました。
理由は2つあります。
- 自分の取り分を増やしすぎて保育士に還元せず人手不足に陥ったこと。
- 調子に乗って別事業に手を出して失敗したこと。
保育園は、集客が必要ないのでマーケティングやセールスに関するビジネススキルが身につきません。
しかし、複数店舗出せれば儲かってしまうので、自分が優れた経営者だと勘違いしてしまうんですね。
「住人の皆さまから税金を頂いている」という意識を常に持ち、福祉施設という社会貢献をする施設で稼がせてもらっていることを忘れないようにしましょう。
認可外保育所の開業・経営については、認可系とは大きく異なります。
認可外に興味のある方は、こちらの記事を確認してください。
それでは、保育園の無事に開業できることを祈っております。質問や相談はお気軽に。