東京都が創設した認証保育所。
保育業界に詳しくない方は、認可保育所と認証保育所の区別もつかないかと思います。
ここでは、認証保育所も認可保育所も開設&経営実績のある私が、認証保育所について詳しく説明していきます。
認証保育所は、現在は新設数が少なくなっておりますが、新たに保育事業に参入するためには、選択肢の一つにいれておくべきです。
認証保育所とは
認証保育所は0歳〜就学前の児童を預かります。
収入は、約半分は補助金、残り半分は保護者から保育料徴収して運営していきます。
ただし、0〜2歳の定員を半数以上に設定する必要があります。
また、保育に必要な”人数”は認可保育所と変わりませんが、有資格者…つまり”保育士数”は保育に必要な人数の6割で良いとされています。
認証保育所は、認可外保育所の部類に入ります。
国からの認可は受けていないので認可外ですが、都からの認証は受けています。
ただの認可外保育所よりも社会的信頼はありますが、認可保育所よりも規制緩和されているので信頼は落ちます。
しかし、規制緩和されている分、独自サービスを打ち出せたり、保育料の設定に自由度があったり、必要な保育士数が少なくて良かったりとメリットは充分にあります。
認可保育所があるのに、なぜ認証保育所が存在するのか?
女性の就労人口が増えたため、待機児童問題が深刻化し、特に0〜2歳の待機児童の解消が困難になった東京都は、この0〜2歳の受け皿確保のため、認証保育所という制度を作りました。
0〜2歳は、必要な保育士も保育するための面積も多く、認可保育所では0〜2歳の園児の定員が少なく設定されており、認可保育所だけでは対応しきれなかったのです。
3歳になれば、認可保育所の園児の定員も増えますし、幼稚園という選択肢も出てきます。
よって、0〜2歳の受け皿を作れば、何とか待機児童問題に対応できると考えたのです。
つまり、認証保育所は、0〜2歳を中心に預かり、3歳以上の子供達は認可保育所や幼稚園へと転園していくのが基本という訳です。
前述の0〜2歳を定員の半数以上にする必要がある訳ですから、全員が進級し続けられないということは分かりますよね。
もちろん、制度を駆使して全員を進級させ続ける方法はあります。ただ、認可保育所よりも保護者の費用負担が大きいので、大抵は認可保育所へ転園していきます。
認証保育所の新設が減っている理由
認証保育所は、認可外保育園なので、認可保育所に転園するまでの”つなぎ”のような保育園です。
しかし、認証保育所は東京都が作った制度であって、政府としては全国的に待機児童解消しなければなりません。
そこで、0〜2歳のみを預かる認可外保育園である小規模保育園(正式には小規模保育事業)を認可事業とすることで、全国的に0〜2歳の受け皿確保を行いました。
よって、認証保育所は、小規模保育園というとても大きなライバルの出現によって、衰退傾向になっています。
ただし、待機児童の解消にはまだまだ時間がかかりますので、とりあえず保育業界に参入するために、あえて認証保育所の開設を検討しても良いと思います。
一度、開設できれば、認証保育所の運営実績を持って、小規模保育園や認可保育園への参入ができるようになりますし、認証保育所から小規模保育園や認可保育園への”移行”の可能性も出てきます。
保育経験がない事業者から見ても、認可保育園参入への”つなぎ”として使えるという訳です。
認証保育所を経営するメリットとデメリット
認証保育所は、認可外の部類に入りますので、認可保育所よりも参入障壁が低いのがメリットです。
しかし、現在は小規模保育園(小規模保育事業)が認可事業となったため、認証保育所の需要はだいぶ減っているというデメリットがあります。
他にもありますので見ていきましょう。
認可保育園のメリット
定員の設定の自由度が高いです。小規模保育園は6名〜19名。認可保育所は60名以上と制限がありますが、認証保育所にはありません。(区によっては指示されますが。)
よって、小規模保育園にも認可保育園にもできない物件でも、認証保育所なら開業できます。
先ほども書きましたが、認証保育所の運営経験も保育事業の運営実績として見なされますので、事業拡大の際に有利になります。
収入の半分は補助金ですので様々な制限がありますが、収入のほとんどが補助金である認可保育所よりも規制が少ないです。よって、独特な保育サービスを実施することができます。
認可保育所の場合、サービス料を追加で徴収することができず、さらに保育指針に沿っていないサービスは実施できません。
最後に、必要な保育士数が、認可保育所の6割で良いので、保育士不足の現在にはありがたいですね。
保育士数が6割というのは、定員に対してスタッフが10名必要な場合、保育士は6名で良いということです。認可保育所は10割が保育士でなければいけません。
認証保育所のデメリット
最大のデメリットは、需要が減っていることです。
次に、補助金が少ないので保護者負担が大きいこと。つまり認可保育園へ転園されること。
最後に、認可保育所とは違い役所が児童的に園児を振り分けてくれないので、集客が必要なことです。
ただ、先ほど述べた通り、今後の保育事業の拡大の足がかりとして認証保育所を開業することをオススメしているので、最初から小規模保育園か認可保育園に移行する前提で施設を作るか、2店舗目のための投資として考えましょう。
認証保育所を開業するには
認証保育所とはいえ、参入障壁がないわけではありません。
認可保育所と同様、保育園の運営実績が求められることも多く、そもそも公募も減っています。
しかし、大々的に公募はしていなくても、話を聞いてくれる区もあります。
- 区に問い合わせて認証保育所の開業が可能か確認する
- 良い物件を見つける
- 開業申請
- 難しい場合はフランチャイズも検討する
必死に認証保育所の開業だけを目指すのではなく、小規模保育所・認証保育所・認可保育所と、全てのパターンを選択肢にいれておくのが大事です。
選択肢が多い方が、参入できる可能性は当然上がりますからね。
認証保育所の開業が無理だった場合は、かなり遠回りになりますが、「ただの認可外保育所→小規模保育所→認可保育所」というルートも検討した方が良いでしょう。
実際に認証保育所の開業申請ができるようになった場合の、手順については別記事にまとめています。
▶︎▶︎【開業の基礎】認可系保育園を開業するには?保育園の開業方法・流れ・手順
フランチャイズについては、オーナーによって向き不向きが分かれます。フランチャイズについては、こちらの記事で解説しています。
▶︎▶︎フランチャイズ(FC)で保育園を開業するメリットはあるのか?向き不向きが極端に分かれます。
認証保育園の収入・補助金(運営費等)
認証保育所を経営する上でもらえる補助金(運営費等)ですが、これはかなり複雑で経営したことがある人でないと、訳がわかりません。
補助金と保護者からの徴収が収入源になります。
ここでは、小規模保育所と認可保育所の中間にあたる40名定員の認証保育所の例をご紹介します。
◆1年間の収益例
- 運営費補助金:3500万円
- 保育士の処遇改善補助金:300万円
- 保育サービスの充実補助金:200万円
- 保護者からの徴収:2500万円
- その他(区によって家賃補助など)
合計6500万円の収入
同じ40人定員の認可保育園でも、各年齢の定員設定で変わってきます。
また、保育定員・面性の弾力化と言うものがあり、定員を超えて預かることができますので、収入をあげる余地はあります。
家賃と人件費が支出のほとんどを締めますが、10%の利益が残るというイメージで良いと思います。
おわり
認証保育所は需要が減ってきていますが、小規模保育所や認可保育所での参入だけでなく、認証保育所での選択肢に入れておくことで、参入障壁の面から、長期的に見れば認証保育所を一回挟んだ方が、より早く認可保育所を開業できる場合もあります。
需要が少ないと言っても、待機児童がいる地域であったり、魅力的な独自サービスがあれば繁盛しますので、頭ごなしに無視するのは勿体ないです。
選択肢として頭に入れておくと良いでしょう。