待機児童を解消する為に、株式会社などの一般法人も保育園を開業できるように規制緩和されました。
しかし、”儲かりそう”という安易な考えや、”利益最優先”の場違いな方針でブラック保育園を作ってしまう会社も少なからず存在します。
福祉の精神がなく、園児や保育士に充分な待遇を与えず保育園を経営するんですね。
保育園の経営のメリットは、集客面だったり安定した経営面です。儲けたいという理由だけで参入するものではありません。
開業後は、福祉の仕事だと言うことを念頭に置いて、保育の質を担保しましょう。
よくあるブラック保育園
保育園は、開業できて基準を満たしてさえいれば、認可系は園児が勝手に振り分けられ、安定した収入が得られます。
私の個人的な考えは、ブラック企業の定義は”法違反のある会社”で、ブラック企業の経営は”すでに潰れている状態にあるが、社員に残業代を払わないことで違法に黒字化している会社”です。
こんな保育園は、一時的に保育士や保護者に迷惑をかけるとしても、さっさと潰れて欲しいと願うばかりです。
もう少し具体的にブラック保育園の例を挙げます。
- 補助金を保育士に正しく分配せず懐に入れる
- 残業代を払わない(サービス残業させる)
- 園児のおもちゃを充分に用意しない
- 保護者対応が事務的・機械的
- 定員を超えて園児を受け入れ、サービスが低下する
- 安定していない施設があるのに新施設を開設する
保育園は、認可系の場合は安定した収入が得られますが、”儲かってウハウハ”というビジネスではありません。
思ったより儲からないと感じたら、保育園は安定した収入しか得られませんので、儲けるために上記の様な暴挙に出る企業もある訳です。
ブラック化すると、そりゃあもちろん儲かります。法律守らないんですから。
ただ、ブラック保育園は、保護者からのクレームラッシュ、離職率の増加による保育士不足スパイラル、果ては行政からの指導や行政からの処分が行われ、閉園に追い込まれます。
場合によっては、開設時に貰った補助金を返還しなければならず、破産する可能性もあります。
保育園は、社会的養護や児童家庭福祉の一翼を担っていることを忘れないで下さい。
開業前からちゃんと保育の質を担保しよう
保育の質は、雇った保育士に任せていれば解決する訳ではありません。
設計段階からしっかりと保育の質を考えて、保育園を作らなければなりません。
それも、建築士に任せておけば解決する訳ではありません。
”保育の質・子どもの利益・保育士や栄養士の働きやすさ”を常に頭に入れることができるのは、経営者だけです。
さて、それでは認可申請をする際や認可を得られた後など、開業前にやっておくべきことは大きく分けて3つです。
これらは全ての保育園がやることですが、”質が担保できるか?”という視点で見てください。
- 保育園の設計
- 内部書類の整備
- 保育士&保育補助の確保
それぞれ少しづつですが見ていきましょう。
保育園の設計
まず充分な保育室等の面積と充分な収納を、設計段階から意識しなければなりません。
保育士・栄養士の動線や子どもの動線も考えましょう。
ICTやAIの導入もこの時点から検討しておくと良いです。
特に収納に関しては、思うよりもはるかに多く必要です。壁が全て収納でも良いというレベルで必要になります。
もしくは各クラスに倉庫を用意するなどです。
内部書類の整備
次に、内部書類の整備です。
業務に必要な書類の整備はもちろんのこと、システムや規則を周知できるような書類も必要です。
何も知らずに書類を整備していくと、無駄な書類を山ほど作ってしまいます。そのくせ、肝心な書類がなかったりします。
保護者や保育士への負担を軽減しつつ、しっかりと説明ができる書類を整備しましょう。
保護者からのクレームが出るということは、保護者に不満があるということです。
保育士には、保育そのものよりも書類に苦しめられています。
経営側は、書類に対する知識をしっかりと持ち、みんなが迷わない&無駄なことをしなくて済むようにしましょう。
充分な保育士&保育補助の確保
できることなら、相当優秀な園長を確保することが最優先です。
残念ながら保育士はピンキリでして、ピンに位置する優秀な保育士は数が少ないのが現状です。
保育士は保育の専門家ではありますが、マネジメントや職員指導のスキルを持っていない人が多いです。よって、とにかく優秀な保育士を園長にできるよう努めましょう。
もちろん、優秀な保育士を確保するのは難しいですので、その場合は経営側がマネジメントや職員指導を積極的に手伝いましょう。
また、児童福祉施設の設備および運営の基準に定められる保育士数を満たせば良いという考え方では、現場の保育士は非常に辛い日々を送ることになります。
保育士不足ですから、一般保育士確保も簡単ではありませんので、そういう場合は保育補助を活用しましょう。
保育補助とは、保育士資格のない職員で、運営基準よりも余分に雇用する職員ですが、保育士不足の現在ではこの保育補助の役割が大きく、”必ずしも保育士がやる必要がない業務”を任せることで、大幅に保育士の負担を軽減することができます。
関連記事▶︎▶︎保育園の開業決定後は、保護者からクレームが出ないように準備しよう
総務省行政管理局(e-Gov)▶︎▶︎児童福祉施設の設備および運営の基準
開業時・開業後にできる保育の質の担保
次は、開業間近もしくは開業したばかりの頃に行うことについてです。
開業前にできることの修正や改善は当然ですが、開業時は間違いなく現場は大忙しです。
2年目からは新入園児は少数ですが、開業時は全員が新入園児です。職員も子どもも保護者も誰もかれも初対面みたいな状況です。
保護者も保育園を初めて利用する方ばかりで、整備した書類の内容も覚えられていません。
カオスです。
- 職員、保護者への規則の周知
- 保育士のモチベーションの維持
- 管理者の冷静な状況判断
- おもちゃ等の保育に必要なものの不足に即対応する
万全の準備をしたつもりでも、物が足りなかったり、職員や保護者は規則をこちらの希望通りに覚えてはくれません。
また、全員が初めて利用する施設ですから、混乱します。
それぞれ見ていきましょう。
職員、保護者への規則の周知
経営側は基本的にモチベーションは高く、規則を作った側ですから自然と規則を覚えています。
しかし、保育士や保護者は我々ほどモチベーションは高くありません。
そのため、規則を驚くほど覚えていないんですね。
当たり前の様に残業等の連絡もせずに迎えに来ない保護者がいたり、服に名前を書いて来なかったり、危険極まりない服を着せてきたり、持ってくるものを全く把握していなかったり…
そして、規則を守らない場合はその都度、保護者に注意しなければならないのですが、職員もそれを覚えていないと、規則が形骸化してしまいます。
そうすると、保護者も職員も楽な方へ楽な方へ規則を組み替えてしまいます。
酷い時は、延長保育料をサービスしまくって、収入が激減するなんてこともあるんです。
施設が正しく動き始めるまでは、我々が常に指揮しなければなりません。
保育士のモチベーションの維持
オープニングスタッフとして来てくれる保育士さんは、新天地に希望をもっていますので、我々ほどではありませんがモチベーションが高い人も多いです。
しかし、開業直後はカオス状態になりますし、書類の書き方も規則もまだまだ覚えていません。
保育の現場がカオスでも、そこは専門職の保育士ですから何とかしてくれますが、保育以外でも覚えることが多くて負担が大きい訳です。
よって、とにかく現場の保育士は疲れます。
これを「そのうち落ち着くっしょ」くらいな気持ちで放置すると、3ヶ月で辞めるみたいな保育士が出てきます。もしくはストレスで病気になって長期休暇を与える必要も出てくる場合もあります。
年度途中に保育士が退職してしまうと、補充が効かない場合がありますので、人手不足スパイラルに陥る危険があります。
人手不足になると、他の保育士の負担が増えて、また退職者が出てしまい、確保しても確保しても追いつかなくなるからです。
オープン直後が忙しいのは分かってもらえますので、放置せず、コミュニケーションを取って、指導して、保育士のモチベーションを維持しましょう。
管理者の冷静な状況判断
管理者は大抵は園長ですが、園長がまだ未熟な場合は経営側もサポートします。
開業時は、規定や規則はあっても実行されたことがないため、園長や経営側は状況に合わせて適切な指示ができなければなりません。
保育士が遅刻や欠勤した場合はどうする?怪我などの事故が起きたらどうする?感染症が発生したらどう対応する?延長保育の時間が1分だけだったらどうする?
規則で決めていて、書類の整備が完璧でも、職員たちが慣れるまでは混乱します。
そこで管理者がパニックに陥ってしまっては、職員や保護者からの信頼を無くします。
万全の管理体制とサポート体制を構築しましょう。
おもちゃ等の保育に必要な物の不足に即対応する
現場からするとおもちゃは非常に重要で、おもちゃが不足しているといい保育はできません。
モンテッソーリ教育を導入するとか言うなら、かなりたくさんの教具が必要になります。
食器なども同様です。アレルギーが後から発覚する子どもは多いですから、アレルギー児童用の食器などの購入も追加で必要になります。
「何とかその日が回るから良い」という考えでは、良い保育が出来ず、怪我などの事故に繋がりますし、保育士のモチベーションも下がります。
おもちゃが少ない場合、保育士はおもちゃを自作する能力がありますが、それに頼ると保育士の負担が増加しますし、サービス残業や持ち帰り残業を招いてしまいます。
何でも買ってやる必要はないですが、しっかりとコミュニケーションを取って管理していれば、必要な物は分かります。
要は問題解決のPDCAが回る組織づくりをするだけです。
さいごに|コンサルやフランチャイズで経営側の負担軽減
ここで書いたことをするのが難しいと感じるかも知れませんが、適切な保育環境や労働環境を用意する事業者責任があります。
「だって大変すぎて無理なんだもん」という言い訳は通用しないんです。
ここで書いたことは出来て当然だとして、認可をもらっている、もしくは届出を出している訳ですからね。
問題解決のPDCAが回るまでは大変ですが、その時間を短縮する・労力を減らす方法は2択です。
私の様なコンサルタントに一時的に入ってもらい、準備や整備を任せるなり、パッケージ化されたフランチャイズに加盟することです。
しかし、フランチャイズは継続的に費用や制約を受けますので、コンサルタントを使うのが一番おすすめです。
私は保育園のコンサルタントですので、コンサルを推しているのは言うまでもありません。
それでは、良い保育園を作れることを祈っております。