こんにちは。
保育園を開業しようとした場合、「とりあえず小規模保育園かな?」と思うでしょう。
もちろん、それで良いんですが、開業できる保育園の種類を知っておくことで、開業できる確率が上がります。
「小規模で開業しづらい場所でも、認証ならいける」という場合もあり得ます。
保育園の経営・人事を10年勤め、現在は保育園コンサルタントの私が、保育園開業にオススメの保育園の種類や役割、開業難度やおすすめについてご説明いたします。
開業できる保育園の種類
保育園は正式には保育所と言いますので、保育園と保育所が入り混じった書き方をしていきますが、あまり気にしないでください。
また、ここでお話しするのは、東京都内での開業を想定して書いていきます。
さて、それでは保育園の種類についてご説明いたします。
1.認可保育所
認可を受けて開業する形態です。
一般的に保育園とは、この認可保育所のことを言います。つまり、保育園と言われてパッと頭に浮かんでいるのは、この形態です。
20名以上の定員で良いとされていますが、原則60名以上の定員で開業するのが基本となります。
最初の開業で100名以上は無理でしょうから、定員は60名での開業を目指します。
<認可保育所のメリット>
- 国や都・区からの補助金が多い。
- 市や区が園児を振り分けるため、集客の必要がない。
- 開業できれば安定した経営ができる
<認可保育所のデメリット>
- 規制が厳しく参入が難しい。
- 規制が厳しく自由なサービスを提供できない。
- 開業するまでに多額の資金と長い準備期間が必要
2.小規模保育事業
正式には小規模保育園とは言いわず、認可事業として位置付けられています。こちらも認可が必要です。
定員数6名〜19名が小規模保育事業です。
認可事業なので補助金をもらってで運営していきます。
しかし、預かる児童の年齢も0〜2歳までですので、認可保育園とは保育内容に大きな違いがあります。
認可系保育園の補助金は、園児数や職員数に依存するため、比例して補助金が少なくなるため、1園だけでは十分な収入が得られないので、複数園を開業して事業の拡大を目指すのが良いでしょう。
<小規模保育事業のメリット>
- 市や区が園児を振り分けるため、集客の必要がない。
- 開業できれば安定した経営ができる
- 小規模なので少ない資本でも開業ができる
<小規模保育事業のデメリット>
- 小規模なので園児数に比例して補助金が少ない
- 認可保育所同様、認可が必要なので、規制が厳しい
- 園児が2歳までなので卒園まで育てられない
3.認証保育所
東京都が始めた特殊な保育所です。東京都に認証してもらうことが必要です。
イメージとしては小規模保育所と認可保育所の中間に位置する保育所で、定員20人以上〜60人以下の認証保育所が多いです。
一応、認可保育所ではないので、大きな括りとしては認可外保育所になります。
また、補助金についても認可保育所の半分程度になり、残りの半分は保護者から徴収して経営していきます。
小規模保育事業が認可事業になったため、小規模保育事業と認可保育所で全年齢をカバーできるようになり、最近は認証保育所の開業件数は少なくなっています。
<認証保育所のメリット>
- 認可保育所よりも規制がゆるく参入しやすい
- 独自サービスを提供できる
- 必要な保育士数が認可系の6割で良い(残りは無資格者でOK)
- 小〜中規模の物件でも開業できる
<認証保育所のデメリット>
- 最近、自治体が積極的に開設しない
- 保護者から徴収できるが補助金が少ない
- 自治体が園児の振り分けをしないので集客が必要になる
- 保護者負担が大きいので、認可保育所へ転園する児童が多い
4.認可外保育所
国・自治体から認可・認証を受けず、民間で独自に保育サービスを行う保育園です。
託児所もコレです。というか、何の括りか分からない保育施設は、この認可外保育所だと思って良いです。無認可保育園と呼ばれることが多いですね。
ただ、認可外でも届出は必要ですし、立ち入り調査もあります。
認可系の保育所は規制が多いため、あまり独自サービスができませんが、認可外保育所は独自サービスが重要になります。
しかし、その独自サービスがヒットすれば認可系保育所に負けない人気を勝ち取ることができます。
ただ、補助金はほとんどもらえないので、しっかりとしたビジネスとして捉えて経営しなければ、安定は得られません。
例えば、認可保育所でも保育料が高額になる富裕層向けの充実したサービスを提供する保育所などが人気を博しています。
とは言え、将来的には、小規模保育所や認可保育所への移行も視野に入れるべきだと思います。
<認可外保育所のメリット>
- 規制がほぼなく参入障壁がない
- 独自サービスを提供できる
- 独自の料金体系で経営できる
- 保育士の数が認可系の半分から3分の1で良い(残りは無資格者でOK)
<認可外保育所のデメリット>
- 補助金が少ない
- 独自サービスや各種媒体を使って集客に全力を注ぐ必要がある
- 保護者負担がとても大きい
- 認可外・無認可という表現が悪く集客に影響がでる
開業できる保育園の役割
上記4種が主な選択肢となりますが、保育園の種類だけでなく、それぞれの役割を知っておきましょう。
保育園を開業しても、自身が開業した保育園の役割が自分の性格とあっていなければ、長期間大きなストレスを受けることになります。
ここでは、一気に一覧でご説明します。
保育園なので、全て保護者の就労の補助する福祉施設であることは言うまでもありません。
◆それぞれの保育園の役割◆
- 認可保育所の役割:0歳(1歳)〜就学前の児童の全体を預かる児童福祉施設。0〜2歳の定員が少なめになっていることが多いが、児童の集団生活への適応や就学前準備を行う。保育サービスの中心となる施設。
- 小規模保育事業の役割:認可保育所が0〜2歳の定員が少ないため、その穴埋めを行うため2歳までの児童を預かる施設。
- 認証保育所:小規模保育事業が認可事業でなかったころ、0〜2歳を中心に預かる保育所として誕生。0〜2歳の児童が定員の半数以上になるよう設定しなければならないので、人気の認証保育所の場合は進級したくても進級できない児童も発生する可能性も。認可保育所や幼稚園に転園するまでの繋ぎとも言える施設。
- 認可外保育所:保護者が様々な保育サービスを選べるように設置されている。色々な自由を守るための制度と言える。深夜に営業していたり、塾と融合していたりと自由。
待機児童のほとんどは0歳〜1歳です。
少し背景や歴史をお話しします。
0歳は3人に1人保育士が必要ですし、一人あたり3.3㎡の面積が必要なため、全年齢を預かる認可保育所では人員や面積確保のため、どうしても預かる人数が少なくなってしまいます。
(2歳や3歳になってくると、保育士の必要な人数と面積が緩和されてくるため、定員が増えてきますので、2歳以上の待機児童数は激減します。幼稚園に行くと言う選択肢も出てきますね。)
そこで、認証保育所が誕生し、0〜2歳を中心に預かり、待機児童の解消を目指した訳です。
しかし、制度が変わり、小規模保育事業が認可事業となったため、認可保育所に入れなくても「小規模保育所→認可保育所or幼稚園」というルートができたため、認証保育所の開設は少なくなりました。
ただ、認可がいらない・補助金半分など、認証保育所も都合がいい部分もありますので、まだ募集している自治体もあります。
それぞれの保育園の開業難易度
もう、だいたい分かったと思いますが、開業の難易度について一応説明しておきます。
当然ながら、開業の難易度は補助金の額と施設規模に依存する訳です。
おそらく予想通りですので、ささっと行きましょう。
しかし、完全に予想通りだと面白くないので、少し変化球を入れます。
星を付けているのが、新たに参入する場合のオススメの保育所形態です。
規模が小さく補助金もある、小規模保育事業・認証保育所で参入を目指し、いい物件と出会って自治体の感触がよければ認可保育所も検討し、全て無理そうだったら認可外保育所で開業する。
このスタンスが基本となるでしょう。
社会福祉法人を設立して認可保育所を開設するのは、土台がない法人ではほぼ無理なので、ある程度会社が大きくなってから検討しましょう。
おわり:まずは小規模保育園と認証保育所で開業を目指そう!
今回は、開業できる保育園の種類についてご説明しました。
用意できる資金や準備に割ける時間によっても変わってきますが、保育業界に新規で参入するなら、先ほどのスタンス…
規模が小さく補助金もある、小規模保育事業・認証保育所で参入を目指し、いい物件と出会って自治体の感触がよければ認可保育所も検討し、全て無理そうだったら認可外保育所で開業する。
これで行きましょう。
認可外保育所が諦めの境地っぽい感じになっていますが、一応は保育事業の経験として扱ってくれることもありますし、開業後に小規模保育事業などに移行できる場合もあります。
参入障壁のある業界ですので、最初の実績作りが大事ですから、長い目で見ると認可外保育所での参入もアリです。
小規模保育事業や認証保育所で参入できたら、小規模保育事業での事業拡大を行いながら、チャンスがあれば認可保育所を開設できるようにしましょう。
やはり、保育業界に参入するなら、最終的には保育サービスの基本である認可保育所を開設することが理想ですからね。
小規模保育所を何店舗も作るより、認可保育所を作る方が効率的です。
もし小規模や認証で参入できて、認可保育所も開設できたら、その後は認可保育所を複数経営できるようになると良いですね。