「健やかに働けないな〜」と思いながら働いている人は、ブラックやグレーな会社に勤めていることも多いでしょう。
会社について何かしら気になる点はあっても、それを補う何かがあれば、簡単には辞めたいなんて思いません。
分かりやすいところで言うと、”仕事がキツイけど給料は高い”とか、”給料安いけど人間関係がめちゃくちゃ良い”とかですね。
今回は、そんな補う部分もないまま、最後の最後までブラックすぎてうんざりしたお話です。
10年間、経営&人事の部署の長をしていたので、私の経験も踏まえて、事例の紹介と、個人でできる対応や注意点をお話しします。
有休消化して退職するだけなのにトラブル
私の話ではなく私に相談してくれた方(以下、その方・本人)のお話です。
さて、その方は、転居による退職ということで、止むを得ない事情での退職でした。
状況をざっと説明するとこんな感じです。
- 事務職で入社したが、求人票になかった営業事務、総務、経理など色々させられた
- これまで有給休暇があまり使えず20日近く貯まっていた
- 1ヶ月引き継ぎして、約1ヶ月有休消化するのが本人の希望
- 状況を考慮して3ヶ月前に退職の申し出をした
- 1時間以上残業した場合のみ残業代がつく謎システム
- 退職の意を伝えても、求人を中々出さない
- 応募がある訳がない酷い募集内容で求人を出したりする
- 急募なのにハローワークのみでの募集
- 新入社員用のパソコンなど引き継ぎに使う機器等を中々用意しない
- そんなこんなでやっと入社した社員に引き継ぎ期間が2週間しかなかった
- 会社の給料の締め日は毎月20日で退職日も20日にするのが社内ルール
こんな状況です。
赤字の部分がブラック感が溢れだしているところです。
ブラック解放
案の定、新入社員の人が、2週間で仕事を覚えられることもなく、有休消化を開始するまでに、引き継ぎが終わらないと分かりました。
そこで、「有休消化を始める時期を遅らせてくれないか?」と言われました。しかし、それと「同時に退職願を出してくれ」と言われました。
こういうところがブラックの知恵ですかね。
退職した後に有給休暇は取れませんから、退職願を出させて有休消化を遅らせれば、有給休暇の日数を減らすことができます。
しかし、その方は、そういうブラックの罠にハメられようとしているとは気づかず、話し合いの余地があると考えてしまったんですね。
とりあえず、退職日を若干延期して、引き継ぎ期間を延ばそうと考えましたが、ブラック企業が本性を表します。
- 有給消化をし始める日を遅らせてくれ
- 退職は給料締め日の20日だから、延期できない
- 退職日を次の締め日まで1ヶ月延長するのも、退職願を提出しているからできない
- 引き継ぎが終わらないの場合、責任を取って有給休暇は諦めてもらうしかない
- 引き継ぎが終わらないのに退職するのは社会人としておかしい
こんな感じで、会社の都合を社会人の常識と嘘ついて押し付けてきます。
これまで有給休暇も取れず、サービス残業もたくさんしていたのに、ブラックを解放してきましたね。
求人を出すのが遅かったり、引き継ぎに使用するパソコン等の用意も遅くかったくせに、社員に責任を転嫁してきました。
なぜこんなに強気でくるのかというと、「どうせ辞めるし」という考えと、「割りに合わない法的措置に出る訳がない」と踏んでのことでしょう。
ちなみに、引き継ぎする上で有効そうだったので、「有給を一気に取らずに分けても良い」と申し出たところ、「それならまとめて有給取って」と言われてたりもしたそうです。
個人でできるブラック企業への対応と注意
さて、未だに”有給休暇を全部使い切るのは非常識人”という風潮がありますし、更には”有給休暇を退職時にまとめて消化するなんて社会人失格”なんて言う人もいます。
これは、有給休暇をいい感じにバランスよく与えなかった会社の責任であって、これを鵜呑みにする必要はありません。
あと、今回の1時間未満はサービス残業という制度や、給与締め日しか退職を認めないという制度も、相手にする必要ありません。
法律に即した制度を作るのが会社の義務です。
ここでは、会社側は”引き継ぎを終わらせるのは義務”、”会社の制度で退職日をズラせない”という主張です。
この二つを同時に主張してくるところがブラック感が満載です。
引き継ぎをするために退職日を延ばすって言っても、会社のシステム上できないと言われるので、有給休暇を諦めるしか手がないようにしてくる訳ですね。
第一段階
まず、大前提として、言った言わない論争は論外です。ですが、論破を目指します。
- イザという時のために、メールでやりとりしたりして、ブラック発言の証拠を残しましょう。
- これまでの出来事や例をまとめて、論破するための書類を作りましょう。
- 自分の主張が法的に正しいかどうかは、労働基準監督署に確認しましょう。
まずは、論破するための証拠や書類作りです。
言った言わない論争は、無駄に終わることが多いので、一度聞いたことも、メール等で再度質問して回答させたりして、証拠を残します。
それらを、労働基準監督署に話して、自分に間違いがないかを確認します。
労働基準監督署は怖いイメージがあるかも知れませんが、そんなことはありません。
労働基準監督署には、その都度、「自分がやろうとしている行動は間違ってないか」を確認していってください。
第二段階
さて、それでは論破にかかります。
例えば、今回の場合、退職願を出さされても、退職日を変更できないというのは、ありえません。
引き継ぎが心配なら、退職願を受け取っても、退職日を調整するものです。
一応、退職願は未確定、退職届が確定というのが一般的な認識です。実際、様式なんて関係ないですけどね。
このブラック企業は、”引き継ぎをさせて、有給休暇も与えない作戦”を実行するために、嘘をついているのです。
引き継ぎに関しては、確かに義務になる場合もありますので、注意してください。
第二段階では、相談のフリして集めた証拠を元に、個人的に論破を目指してください。
今回の場合は、「他の人でも引き継ぎができるのに、自分に責任があるのか?」「有給休暇を諦める法的根拠は何なのか?」「引き継ぎしろと言うのに、退職日をズラせない法的根拠はあるのか?」というところがメインになりますね。
この辺を問い詰めて言ってください。
モメてる感じが嫌なら、質問とか相談という感じで聞いても良いでしょう。できるだけメールのやりとりや録音をして、証拠も残してくださいね。
第三段階
ここまでで、ブラック側には「結構めんどくさいやつだな」と思われたでしょう。
めんどくさいやつと思われれば、こちら側の要求を聞いてくれる可能性があります。
しかし、まだまだ食い下がってくる場合は、「有給を申請した通りに休んでしまう」という方法が有効かなと思います。
基本的にブラック企業は、法違反だろうがなんだろうが、「それはできない」みたいなことで拒否してきます。根拠は、効力のないブラック独自の謎規則です。
ただ、こちらには法律という確かな根拠がありますよね。
もう辞める日が決まっているんですから、会社もそこまでに有給休暇を取らせるしかないんです。
今回の場合、辞める日をズラすのは会社が断ってますから、有給休暇を申請して休んでしまいましょう。
なぜ、引き継ぎに困っているのに退職する日を変更しないのか理解できませんが、単に有給休暇分の給料を払いたくないだけでしょう。
ここで、解決する場合も多いかと思います。
第四段階
さて、この第四段階まで来てしまう人は、不幸にも最後までモメてしまったということになります。
会社の要求を断って有給休暇を消化したものの、その有給休暇を”欠勤”にされたり、退職したことにされたりして、有給休暇分の給料が支払われなかった場合が、この段階です。
こうなった場合は、まず、有給休暇の分の給料が支払われていないとして、個人で請求してください。
様式はどうでも良いですが、もちろん文書で請求してください。
無視される可能性もあるので、支払いの期限も定めてください。期限は書類の到着後2週間くらいで良いかと思います。
支払い方法は口座振込で良いでしょう。
請求書が届いてないとか言ってくるかも知れませんので、メールでも郵送でもダブルで送ると良いでしょう。
そして、無視されるなどして、支払いの期限までに振り込まれなかった場合、今度こそ労働基準監督署に行きましょう。
これまで数回問い合わせていて、更に労働基準監督署の助言に従っていて、法違反も確定状態ですから、おそらく早めの対応をしてくれると思います。
よりスムーズな対応をしてもらうため、とにかく証拠を集めまくっておいてくださいね。
これで、おそらくほとんどの場合は、解決するでしょう。
おわり
今回相談いただいた方は、労基署をからめてまでモメるのは選択されず、会社と話し合って、折衷案でまとまったそうです。
個人個人で色々と状況は変わるでしょうから、専門家や専門機関に相談して、間違いない対応をしていきましょう。
ブラックもあの手この手で攻めてきます。
例えば、有給休暇の申請を無理やり会社の言う通りに書かされたりすると、ややこしいことになります。
ブラックが労基などに攻められた場合に言うのは、「本人の意思でそうした」的なことです。
有給休暇の消化をしなかったのも本人の意思。サービス残業したのも本人の意思。
こんな根も葉もない嘘を証明する書類を書いたりしないようにしましょうね。